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新規事業開発におけるコンサルティングファームの役割や各コンサルティングファームの取り組みを解説

Post Date2023-08-07 / Update-date2023-08-07 /
Categoryサービス別特集 

昨今、多くの企業が新規事業の開発に取り組んでいます。背景として、世界的な情勢の変化や技術/テクノロジーの目覚ましい革新が日々進んでいる現代社会において、既存事業の環境変化や事業構造自体の変化が予想され、業界のトッププレイヤーでもその地位に胡坐をかける状態にはありません。永続的な成長のため、新規事業で新たな市場を獲得することが、各企業に求められてきています。
新規事業開発において、「必ず成功する方法」というものはありません。しかし、知見のあるコンサルティングファームを活用して適切なプロセスやメソッドを用いることで、失敗のリスクを下げることはできます。本記事では、各コンサルティングファームが行っている企業の新規事業開発支援に関する様々な取り組みについて、具体的にいくつか取り上げて紹介していきます。

  1. 新規事業開発におけるコンサルティングファームの役割
  2. 各コンサルティングファームの取り組み
  3. まとめ

新規事業開発におけるコンサルティングファームの役割

企業が新規事業を始めるというのは、簡単なことではありません。開発する商品やサービス、対象とする市場や顧客を明確化するだけでなく、立ち上げようとしている新規事業が企業にとってどのような役割を果たすのか、本当に立ち上げる必要があるのか、など議論すべき点は非常に多くあります。また、開発にかける期間、投資する予算等を適切に定め、リスク管理をすることも必要になります。

こうした、新規事業開発を進めるにあたって必要となる「メソッド」を企業に提供するのがコンサルティングファームの役割となります。事業の方針や立ち上げプロセスの検討等、様々なことをクライアント企業の社員と一緒になって進めていきます。コンサルティングファームには様々な分野のバックグラウンドを持った専門家がいることが多く、彼らが企業間の情報などを繋げることで、新規事業開発の手助けをすることもあります。なお、共同出資等、新規事業開発に必要な投資の一部を担うことで、事業のリスクシェアまで入り込むコンサルティング形態もあります。

次章では、各コンサルティングファームが実際に行っている新規事業開発支援の取り組みに関して、いくつか取り上げてご紹介していきます。

各コンサルティングファームの取り組み

BCG Digital Ventures(BCGDV)

BCGDVは、BCG傘下の独立した組織として2014年に設立された、BCGと密に協働するアーリーステージ・グロース・プラットフォームです。大企業のデジタル系新規事業創造を支えることを目的としており、企業の協業パートナー、事業パートナーとして、戦略立案からデザイン、開発、運用・成長、投資までの機能を一貫して提供しています。

大企業がデジタル分野の新規事業を開発する際に妨げとなるのは、機能のレイヤーごとに担当する専門ファームがことなり、各機能が分断されてしまうということです。BCGDVではこの問題を解決すべく、多様なバックグラウンドを持ったエキスパートの中から最適な人材を選び、クライアント企業をエンド・トゥ・エンドでサポートしています。また、状況に応じてキャッシュや現物(知的財産等)を投資し、リスクシェアも行います。

BCGDVとBCGがクライアント企業と協業してして新事業を作り出すために編みだした、①イノベーション、②インキュベーション、③コマーシャリゼーションという3つのフェーズによるアプローチを紹介します。

1.イノベーション

12週間~14週間にわたって、徹底的に事業アイデアの幅だしと絞り込みを行います。最初はアイデアをどんどん幅出しし、数十から100程度までアイデアを出します。この際に、企業の現状とあるべき姿のギャップに着目し、イノベーションのチャンスを探ります。
その後、4回の投資委員会でこれらの事業アイデアを評価し、有望なコンセプトをに絞り込み、磨きこんでいきます。投資委員会は親企業のCEOや経営幹部構成され、BCGからもパートナーが参加し、スタートアップチームが彼らに対して5~10分ずつピッチ(新しいアイデアの提案)を行います。最終的には2~3の事業コンセプトに絞り込まれ、これらがプロトタイプとなります。

2.インキュベーション

イノベーションフェーズで出てきた2~3のプロトタイプに対して、開発に進めると判断したものを開発していきます。この開発段階においては、「リーン」と「アジャイル」という2つの特徴があります。

  • リーン:「リーン(lean)」とは、「無駄のない、効率的な」という意味で、必要最低限の一番重要な機能に絞って開発することを意味します。このように開発した商品やサービスのことを「MVP(Minimum Viable Product)」と呼び、リーンな開発においては、最初はMVPに焦点を絞って商品を迅速に売り出し、ユーザーの反応を見ます。そして、後から必要に応じて機能を追加していけばよい、という考え方となります。
  • アジャイル:「アジャイル(agile)」とは、「すばやい、機敏な」という意味で、イテレーション(反復)と呼ばれる短い開発期間単位を何度も回しながら開発を進めていく手法です。ユーザーにテストを繰り返しながら、フィードバックに応じて方向転換し、その度に柔軟に改変を加える、というサイクルを超高速で回します。従来の工程ごとに分かれた開発において弱点であった、修正が難しい、成果物が最終段階まで見えてこない、といった問題点を克服した開発方法となります。
3.コマーシャリゼーション

商品・サービスの継続的改善とマーケティングの両面でPDCA(Plan-Do-Check-Action)を高速で回し、チューニングしていきます。マーケティングにおいては、プリアクセス、オンアクセス、ポストアクセスの3段階があります。

プリアクセスは集客の段階であり、アクセスが増えるように、SEO(検索エンジン最適化)やSEM(サーチエンジンマーケティング)、その他諸々の集客戦略を企画実行し、ひたすらPDCAを回してチューニングしていきます。オンアクセルでは、ウェブサイトを訪れたユーザーが、購買までつながる比率を上げるために、サイトのユーザーインターフェース向上などに取り組みます。ポストアクセスとはCRMに該当し、顧客の満足度やリピート率、そしてその顧客の単価等をどのようにすれば上げられるか、といった点に取り組みます。そして最後に、この3つを支えるデータベース・マーケティングが存在します。

BCGDVは、世界各地の最前線での経験をもとに新規事業創造に向けたアプローチを独自に体系化し、日々進化させています。より詳細な情報は、以下の企業ホームページや参考文献をご覧ください。

(引用元:内田和成|2016|BCG経営コンセプト 市場創造編 東洋経済新報社

レイヤーズ・コンサルティング

レイヤーズでは、デジタルデザイン思考を活用した新規事業開発プロジェクトを行っています。スピーディーに新分野・新ビジネスモデルを検討し、半年から1年程度での新規事業立ち上げを行います。イメージは以下の通りです。

レイヤーズの新規事業開発プロジェクトの特徴

レイヤーズでは、デザイン思考・論理思考・技術思考に基づいて、イノベーティブかつ実現性の高い新規事業を開発しています。

レイヤーズの新規事業開発支援の特徴として、「ターゲット業界」×「デジタル」×「UX(User Experience)デザイン」のリーディング企業・代表有識者とのテクニカルゲートキーパーを保有しており、このネットワークを活かした開発を行っていることが挙げられます。特に、新事業アイデア創出や、ビジネスモデル変革、ビジネスアライアンス提携などビジネス企画から立ち上げまでをスピーディに実現するにあたって、テクニカルゲートキーパーの存在が有効となります。(テクニカルゲートキーパーのイメージは以下です)

また、レイヤーズではビジネス立ち上げをスピーディ且つ強力に推進させる「業際プロデュース機能」を提供しています。業際化(異業種と組むこと)を行う事で、顧客のユーザーエクスペリエンスからみたワンストップをスピーディに実現することができます。そして、複数社のノウハウ・発想・リソースの組み合わせによって、新市場を創造できる可能性が高まります。

業際プロデュースの具体的機能
  1. 周辺業界のビジネスの特徴・環境変化を的確に把握し、新たな事業モデルを企画する機能
  2. 必要に応じてタイムリーにプレイヤーのキーマン、トップマネジメントとコミュニケーションをとり、説明・説得し、資源(ヒト・モノ・カネ)動員を実現する機能
  3. 事業に必要な機能を抽出し、具体名レベルでアライアンス候補先を抽出する機能
  4. アライアンス候補先のトップマネジメントとリレーションを保有し、候補先のメリットも勘案しつつ、具体的アライアンスを実践する機能
  5. スピーディにトライアルやプロトタイプリリースを企画・推進する機能
  6. 顧客内で営業活動・業務設計をリード・推進する機能

レイヤーズ・コンサルティングのより詳細な事業内容に関しては、以下の企業ホームページをご覧ください。

(引用元:レイヤーズコンサルティングホームページより 新規事業開発

ベルテクス・パートナーズ

ベルテクス・パートナーズは、既存のビジネスからの変革を目指すクライアント企業の新たな事業/イノベーションの創出やプロセス改革、様々なビジネス課題の解決を支援しています。さらには、ビジネスパートナーとともに、社会に新しい価値を創造する新規事業をプロデュースします。

ベルテクス・パートナーズの新規事業創出における指針
  • Clear goals
    全社経営戦略における新規事業創出の位置付けを再確認し、新規事業のゴールと展開スタンスを明確化します。
  • Full lineup
    新規事業のシーズ・アイディア検証からビジネスモデル策定、プロトタイプ検証、事業計画化に至るあらゆる検討フェーズに対応します。
  • Hands on
    新規事業創出のためのプログラムの設計から運営、組織作り、事業化推進をクライアントと一体となった伴走型で支援します。
  • Navigation
    必要に応じて事業立ち上げに必要なアライアンス先の開拓やM&A推進の支援も行います。
新規事業創出のアプローチ

事業化推進において各ゲートプロセスで検証の質を向上させることで、新規事業創出の失敗リスクを下げることができます。また、状況に応じて組織改善や制度設計、人材育成を進め、新規事業創出におけるスピードと質の両面からの底上げを図ります。
ベルテクス・パートナーズは、大手上場企業を中心に、通信・商社・メディア・メーカー・エンタテインメントなど、数多くのクライアントでの新規事業創出の取り組みを支援しています。より詳細な情報は、以下の企業ホームページをご覧ください。

(引用元:ベルテクス・パートナーズホームページより 新規事業創出

フィールドマネジメント

フィールドマネジメントでは、「ズラシ戦略」による新規事業開発を得意としています。「ズラシ戦略」とは、「スキル等を含めた企業の本質的なアセット(資産)を見つめ直し、新たなビジネスを展開して、これまでとは異なる顧客をつかまえること」です。つまり、すでに持っている自社の強みを別領域で活かすかたちの新規事業開発ということになります。

このズラシを行う際に重要となるのが、”隣地”ではなく”飛び地”を狙うことです。近い業界に新規事業開発を行っても、得られる成果は限定的になってしまい、インパクトは大きくありません。また、もう1つ留意すべき点は、ずらした先で果たして会社の強みが優位性を持つのか、という点です。自社が使おうとしているスキルが、ズラシ先の業界であまり重視されて来なかった場合に、ズラシが大きな成果を生む可能性が出てくるのです。

以下では、フィールドマネジメントが実際に行った「ズラシ戦略」の事例を1つご紹介します。

フィールドマネジメントが行った「ズラシ戦略」の事例

~株式会社ティー・ワイ・オー(TYO)の再建~
株式会社TYOはCM制作会社です。検討当時の背景として、時代の変化とともに映像データの受け渡しがテープからデジタル送稿に変化したことで、これまで得ていた利益を大きく失うことになりました。この会社のもともとの事業は、「広告代理店から受注を受ける映像制作プロダクション」でしたが、会社の成長に伴って、クライアントとの直接取引も始めるようになっていました。その中で、特にベンチャー等中小のクライアントについて、効果は見込めるけれども、資金的に広告/PRにそこまでお金がかけられない現実に直面しました。

そこで、TYOとフィールドマネジメントがタッグを組んで、広告活動のための資金調達ニーズに対応したベンチャーファンド「Ad Hack Ventures」を設立しました。ベンチャー企業が成長してくると、上場を視野に入れた知名度向上のために、テレビCMを展開したいというニーズが出てきますが、先の読みづらいベンチャーのテレビ広告にベンチャーキャピタルはお金を出しにくい状況があります。そのニーズを満たすのが、本ファンドの役割となります。

結果として、これまでの「広告代理店の下請け」から顧客が「企業の広告担当者」になり、「企業の経営陣」がビジネスの相手となりました。これは、TYOの持つ「広告、CM制作というアセット」を活かしたまま、その対象をずらして事業を新たに展開する事ができた例となります。

「ズラシ戦略」に関する詳しい説明やその他の事例については、以下の企業ホームページや参考文献をご覧ください。(フィールドマネジメントホームページ

(参考文献:並木裕太|2019|ズラシ戦略 今の強みを別のマーケットに生かす新しいビジネスの新しいつくりかた 大日本印刷株式会社

まとめ

ここまで、コンサルティングファームの新規事業開発支援に関して、いくつかの企業をピックアップしてご紹介しました。

世の中の情勢や市場の様子は日々変化し続け、各企業が既存の事業のみで続けていくことは難しくなってきました。しかしながらこれは裏を返せば、各産業の障壁が低くなっている中でどの企業においても新たな領域で事業を始めるチャンスがある、ということでもあります。実際に新規事業開発に取り組む会社は年々増えておりますし、それに伴いコンサルティングファームの利用機会も増加しています。企業が自社のリソース/リレーションだけで新規事業開発を行うのは難しいことが多く、コンサルティングファームが必要とされているのです。

企業の新規事業開発として、その現場を経験したいという方も多いでしょう。一方、コンサルティングファームという立場で新規事業開発に携わるメリットとして、様々な企業の新たな取り組みを最先端で知ることができますし、コンサルティングというサポートの立場ではありますが、複数の現場を経験することが出来ます。将来的に自身が新規事業を起こしたい、という方であっても、最新動向に触れたり、他企業の新規事業開発を通じてそのプロセスや悩みを学んだりすることは、絶好の機会とも言えるのではないでしょうか。

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