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コンサルティング業界における新たな潮流

Post Date2019-08-23 /
Categoryキャリア別特集

コンサルティング業界は世間のイメージと実態が異なり、大企業のトップ/経営陣と対等にディスカッションし戦略を描く仕事、という印象しかないという方が殆どです。大前研一氏や堀紘一氏を始めとする一部の方のメディアへの露出、コンサル卒業生の活躍、コンサルティング領域の拡大等に伴い、国内市場は成長しており、今や新卒大学生の就職活動人気も高い業界ではありますが、実際に仕事での接点が無ければ、実態について理解されていない方が多いと考えます。
“戦略を描く”という側面は変わっておりませんし、その市場も継続して拡大しておりますが、一方でコンサルティングの役割/内容も大きく変わっております。この特集では、足もと進んでいるコンサル業界のトレンドに触れたうえで、今後の展望可能性について述べます。コンサルティング業界への転職や、コンサルタントとして実際に現場で働かれている方のキャリアを考えるうえでも、参考になれば幸いです。

すでに進んでいるトレンドについて

コンサルティング業界にすでに進んでおり一般的になっているトレンドについては主に以下の3つがある。

分業から統合へ

リーマンショックの影響でグローバルでは一部の戦略系ファームが会計系ファームの再編に巻き込まれ、既に両者の境界は失われつつあった。一方で、コンサル後進国の日本ではようやくマッキンゼー、BCGを中心に市場での認知度が高まり、戦略案件は外資戦略系、ITは総合系とする境目が存在した。しかし、外資戦略ファームの手法の共有、卒業生の事業会社への転身の増加、テクノロジーの変化等により、コンサルティングファームとクライアントでの情報格差は低くなり、全社戦略だけで価値を出すことは難しく、クライアントのニーズも多様化している。そのため、「全社戦略を描いて終わり」ではなく、「実際に各事業や管理面での戦略/実行までサポートする」ことが戦略ファームでも求められ、一方で総合系ファームは、クライアント側でコンサルティングへの抵抗感が無くなったことと、戦略ファームからの人材の流入もあり、システム導入や業務プロセスと密接に繋がる全社IT戦略や事業戦略への獲得、そのさらに上流である全社戦略案件に乗り出している。結果、グローバルに遅れてではあるが、国内でも戦略/総合の差は以前ほどなくなっている。

プロジェクトの長期化

前述の通り、各事業への戦略/実行までのサポートが加わったことで、プロジェクトが長期化し、クライアントと年契約で締結し、その契約が継続される案件も多くなっている。クライアントに信頼されていることによるリピートとも捉えられるが、悪く言うとクライアント自社ケイパビリティでは最早対応出来ない、ともいえる。本来的には期間を定めてその期間内で成果を上げる、クライアントに自走させるケイパビリティを伴わせる、ことがコンサルティングファームの役割とも言えるため、この流れには賛否両論ある。

業務代行化

2つ目の長期化とも重なり、特に事業部レベルのプロジェクトで生じるが、現場に十分なリソースがなく、常駐して代わりに実行アクションをリードするものや、分析/上申の為の資料作成サポートをコンサルタントが支援する案件が増えている。なお、この体制を維持するためには、現場で頑張る若手コンサルタントの数を揃えなければならないため、結果的に各社の大量採用に繋がっている。このトレンドは「高級文房具化」と揶揄されることもある一方で、高いフィーを払ってでもコンサルタントに頼まなければならない各社の事情や、実際に価値を出しているコンサルタントの功績はあるだろう。

まとめ

この3つの流れからも、かつてのコンサルタントイメージと実態が変化していることは理解出来るだろう。上述の通り否定的な意見が存在する一方で、欧米ではすでに斯様な傾向は過去より見られる点、コンサル後進国だった日本の市場がこの変化と共に拡大し、クライアントに浸透/価値を理解して貰えている事実もあるため、一概に悪いとは言えない。

今後進むトレンドについて

デジタル化

こちらもこの1~2年で急速に進んでいるが、テクノロジー(Big Data活用、AI、IoT等)の進化に伴い、各社デジタル関連のプロジェクトが大幅に増加している。ある戦略ファームのパートナーによると、「デジタルと一切関係のないプロジェクトはないと言ってもよいほどだ」とのこと。伴い、各社ともデジタル系の新組織/新会社を立ち上げ、デジタル知見を持つ人材(AI研究員やデータサイエンティスト等)の採用、他ファームからの引き抜きを進めている。(※各社のデジタル組織/会社立ち上げは以下の通り)

デザイン思考(右脳)化

上記の様なケイパビリティ整備を進めていることや、特にデジタライゼーションサポートを強みとするファームも出てきている一方で、「戦略から業務プロセス/IT等に落とし込む」というロジックアプローチが、「デジタル時代のビジネス」と合わない部分があり、各社とも一部で方向性の変化を迫られている。というのも、世界を席巻するGAFAのアプローチは「感覚的/体験的」で、「デザイン重視」、「ゼロからイチを生み出す」、形であり、特に「ユーザーを理解する」ことから「ユーザー中心に事業コンセプトを策定」することが重視される。この点は従来のコンサルティングファームには備わっておらず、デジタル人材の採用で一部補える部分はありつつも、更に差別化するために各社デザインファームとの提携を進めている。加え、デザイナーやエンジニア、建築家を採用して内製化する場合も出てきている。

なお、この流れの中で、従来「ユーザー視点でゼロからイチを作る」クリエイターを多数擁護する広告会社が、広告事業の頭打ちもあり、コンサルティング事業に参入。更にコンサルティング業界は競争が増している。(※各社の提携状況は以下の通り)

その他の変化

成果報酬型

本来、コンサルティングは「事業の再生」や「コスト削減」等を謳っている以上、結果に対してコミットすべきではあるが、多くの場合、他の士業と同様にコンサルタントがクライアントに使った時間に対して請求される。勿論、高額なフィー体系ながらコンサルティング市場がここまで広がっているのだからその成果はクライアントに認識され、価値を感じられているものと考えるが、一方で高額なフィーであるが故に業界や企業規模が限定されており、市場拡大の足かせとなっていた。近年では本来のコンサルティングの価値を問い、成果が出た際には享受すべく、成果報酬型のプロジェクトが増えている。コンサルファーム側は赤字となるリスクを持つ一方で、真に自信のあるサービスをクライアントに提案でき、顧客にも満足して貰えるメリットはある。ある外資系ファームは成功報酬型モデルで従来コンサルティング業とは無縁だった病院業界を開拓し、また、国内のプロレド・パートナーズは成果報酬型モデルをベースとすることでクライアント満足度が非常に高く、成果も出ているため90%以上のリピート率を誇っている。

自己資本での投資事業/ファンド化

成果報酬型よりも更に進んだ形として、一部のコンサルティングファームでは、従来のコンサルティング事業のみならず、自己投資してクライアントと事業を立ち上げる、出資してコンサルタントを送り込んで事業を行う、その資金元を投資家から募るファンド事業化も既に進んでいる。事業リスクをクライアントと負うことで、真の意味でクライアントのリスクを抑える究極の成果報酬型モデルと言える。

おわりに|今後の展望

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。足もと進んでいるコンサルティング業界の変化について理解し、一部の方には、「コンサルティング業界って本当に面白いのか?未来はあるのか?」と、不安に感じられる部分もあったかもしれません。

他の業界同様、市場拡大とプレイヤーの増加、テクノロジーの変化といったマクロ環境に併せ、コンサルティング業界自体もそのビジネスモデルを問われるタイミングに来ていると考えます。いわゆる従来型のコンサルティングだけでは勝負出来ないため、より、クライアントと事業を開拓する、自社の優秀な人材を使って新事業をゼロから立ち上げる、更には、保有するクライアント企業とのリレーションやあらゆる業界データを組み合わせてプラットフォームビジネスを始める、等の方向へより進むことも予想されますし、変化出来ない会社は淘汰されていくでしょう。

ただ、悲観的な話ばかりではなく、デジタルやデザインとの融合、成果報酬型や投資事業モデル型といった変化は更にコンサルティングファームの知見や人材の幅を広げるものであり、その変化の中で経験を積むことはコンサルタント達のキャリア面でも大いにプラスになると考えます。自身のやりたい事業をコンサルティングファームというプラットフォームを使って実現する、ことも可能ではないでしょうか。そのような事例もすでに出てきております。

参考文献

  • NEWS PICKS特集『コンサルタント3.0』、『コンサル業界3つの新トレンド』
  • 並木裕太(2015)『コンサル100年史』ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 『外資コンサルって、これからも必要ですか?』日経ビジネス Web
  • 長谷部智也『いたいコンサル すごいコンサル 究極の参謀を見抜く「10の質問」』日本経済新聞出版社

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